肛門外科

肛門外科について

肛門外科

日本人の3人に1人は“痔”を持っているといわれるように、多くの人が痔の悩みを抱えながら生活しています。しかし、「恥ずかしい」とか「手術は怖い」等の理由で、多くの方が受診を控えているのが現状です。
肛門疾患は、“切らずに排便習慣のコントロールで治す”事が重要ですが、医学的にみて手術を含めた何らかの処置をする以外に治療法がない場合もあります。当院では患者さま一人ひとりの治したい程度や治し方のご希望をお聞きしながら、最適な治療方法を考えさせて頂いています。

日常生活での痔の予防方法

痔の発症は、おしりに負担のかかる生活習慣に大きな原因があります。また治療後も、以前と同じ生活を続けていると新しい痔を発症させてしまいます。かかる前にも治った後にも、おしりに優しい生活習慣を身につけましょう。
  • 野菜や果物を出来るだけ多く摂って、便秘にならないようにしましょう。
  • お酒や香辛料はなるべく控えて、下痢にならないようにしましょう。
  • デスクワークやドライブで、長時間の座ったままの姿勢は避けましょう。
  • お風呂では充分に温まり、身体の血行をよくしましょう。
  • 腸の働きを活発にするために、適度の運動を心がけましょう。
  • 便意をもよおしたら、我慢せずにトイレに行きましょう。
  • 排便時に強く息むのは3分以内で、無理に出し切ろうとするのは止めましょう。
  • おしりを清潔に保つために、温水洗浄式便座を使用しましょう。

痔について

肛門外科

痔の種類は、痔核(いぼ痔)・あな痔(痔瘻)・裂肛(切れ痔)の3つに大きく分けられます。診断は病状を正確に把握することで可能です。
まず問診を行い、その後は直腸指診や肛門鏡で病変の方向性や大きさを確認します。

下着が汚れる
粘液や便がついている→ 内痔核脱肛
膿がついている→ 痔瘻
排便時の出血
便器に真っ赤な血がポタポタと落ちる→ 内痔核
トイレットペ-パーに真っ赤な血が付着している→ 裂肛・痔核
肛門部の痛み
排便時に痛い→ 外痔核・裂肛
常に痛い→ 血栓性外痔核・痔核に炎症を伴ったとき
激しい痛み→ 内痔核嵌頓
組織が肛門から出ている
柔らかい組織→ 内痔核
硬い組織→ 血栓性外痔核・肛門ポリープ
大きく出ている→ 内痔核嵌頓・直腸脱

症状と治療法について

痔の治療方法は種類、程度、部位などにより、生活習慣の改善や薬剤等の保存的治療と手術に分かれます。特に手術が必要な方には仕事やご家族の都合を十分に話し合い、方法と日程を決めさせて頂いています。

痔 核

症状の程度
  • 肛門外科
  • Ⅰ度 出血のみで痔核の脱出はない
    Ⅱ度 排便時に脱出するが自然に肛門内に戻る
    Ⅲ度 指などで押し込まないと戻らない
    Ⅳ度 常に肛門外に出たまま戻らない
治療方法
保存的治療 肛門に坐薬や軟膏を注入して腫れをひかせます。Ⅰ度はこの方法で治ります。
硬化療法 痔核に薬剤を注入して痔核自体を小さく固めてしまう、以前からの治療法ですが効果が長続きしないという欠点がありました。現在はジオンという根治性の高い治療法が注目を浴びています。詳しくはジオン注射療法を参照して下さい。
手術治療 痔核に流入する動脈を結紮して痔核自体も切除する手術です。結紮切除法という手術で、Ⅲ度、Ⅳ度になるとこの方法が必要となります。内痔核に対しては最も根治性が高い治療法です。

痔 瘻

症状の分類
  • 肛門外科
  • Ⅰ度 皮膚の浅いところをはうような痔瘻
    Ⅱ度 括約筋を瘻管が貫く痔瘻で、発症者の6割を占める一般的な痔瘻
    Ⅲ度 肛門の後ろに痔瘻の入り口と膿の溜まりのある、複雑な形の痔瘻
    Ⅳ度 常に肛門外に出たまま戻らない
治療方法
保存的治療 痛みが強いときは薬剤を使用することもありますが、痔瘻は手術以外では治すことは出来ません。
手術治療
開放手術 患部を切除して創部が上皮化するのを待ちます。患部をすべて切除できるので再発の可能性が低い手術です。
シートン法 膿のトンネル(瘻管)に輪ゴムを通して結紮することにより、幹部を徐々に開放創にする方法です。
括約筋温存法 膿のトンネル(瘻管)をくりぬいていって、患部を部分的に取り除く手術です。
筋肉充填法 病変を切除して近くの筋肉で欠損部を埋める方法です。術後の肛門の変形を最小限にします。Ⅲ型痔瘻に実施します。

裂 肛

症状の分類
  • 肛門外科
  • 急性裂肛 肛門に痛みが走り裂けた粘膜から出血しますが、排便後は痛みも出血も治まります。時に内括約筋が痙攣して強い痛みが続くことがあります。
    慢性裂肛 裂けた粘膜の周囲に炎症(肛門潰瘍)によって生じた突起物(肛門ポリープ・見張りいぼ)を作ります。更に傷の炎症が内括約筋まで及ぶと肛門狭窄に進行します
治療方法
保存的治療 急性裂肛に実施します。軟膏の塗布、消炎鎮痛剤の内服、便秘の改善等で通便を整えればほとんどが良くなります。
手術治療 裂肛が慢性化してポリープや見張りいぼを伴って肛門が狭くなった慢性裂肛は、内括約筋切開術や皮膚弁移動術等の入院手術を行います。

ジオン注射療法

手術しないで痔を治療する、新しい内痔核硬化療法「ジオン注射療法」
薬剤を注入して痔核を固める硬化療法は従来から実施されている治療方法です。
しかし、この治療方法は効果が長続きしないので、結局は手術治療に切り替える等の欠点がありました。このジオン注射はその欠点を補うとともに、これまでは手術治療が必要だった「脱出を伴う内痔核」についても効果・効能があり、新しい痔核治療の選択肢の一つとなっています。みわ記念病院では専門の医師がこの新しい痔の治療方法を実施しています。

  1. ジオン注射治療が実施できる病院
    ジオン注射法は治療効果が大変期待されていますが、医師なら誰でも行えるわけではありません。肛門領域に精通した医師で、手技的なトレーニングを受けた専門医が勤務する許可された病院や診療所だけがジオン注射療法を行えます。当院ではその認定を受けています。
  2. ジオン注射の適応
    手術になるかジオン治療になるかは、専門医が診察を行いその程度と特徴で判断しますが、基本的にジオンの対象となるのは、直腸の粘膜下に出来る内痔核です。症状の程度は脱出するⅡ・Ⅲ型と、常に肛門外に脱出したまま戻らないⅣ度が適応になります。
  3. ジオン注射治療の治療方法
    ジオンという注射を投与して、内痔核を切らずに脱出と出血を治療します。痔核を切り取る手術と違って傷口が痛んだり出血が止まらないということはなく、入院期間も手術より短くてすみます。治療は次のような順序で進みます。

    肛門外科

    • 腰椎麻酔や仙骨硬膜外麻酔を行い、肛門周囲の筋肉を弛緩させます。

    肛門外科

    • ジオン注射を一つの痔核に対して4個所に分割して投与します。※複数の痔核がある場合には、それぞれに投与します。
    • 点滴を受けながら、麻酔の影響が無くなる2時間程度安静にします。

    肛門外科

    • 入浴・排便は翌日から可能です。
    • 痔核に流れ込む血液の量が減り出血が止まり、脱出の程度も軽くなります。
    • 投与した部分が次第に小さくなり、引き延ばされた組織が元の位置に癒着・固定します。
  4. 治療のスケジュール(入院から退院まで)
    硬化療法パスを参照してください。
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